高尾の焼薬師


高尾の焼薬師 イラスト

かつて若杉山には湯屋原と呼ばれた所があり、そこから温泉が湧き出ていたそうです。
ある日のこと、若杉山の高尾の薬師様が、二日市湯町の武蔵寺の薬師様とその温泉を賭けてある勝負をしたそうです。
不運にも高尾の薬師様はその勝負に負け、湯屋原の噴湯は武蔵寺の薬師様に渡されてしまい、ついに若杉の温泉は止まってしまいました。
勝負に負けてからしばらく経ったある夜のこと、高尾の薬師様を信仰しお守りしていた治右衛門と孫市の夢枕に高尾の薬師様が立ちました。
「おーい、治右衛門よー。おーい、孫市よー。早よー来んかー。己が焼けてしまうぞー。早よ堂から出してくれ。」
炎に包まれた薬師様が夢の中で大声を出し、二人に助けを求めているではありませんか。
これは大変と飛び起き、高尾の薬師堂に急いで駆けつけると、薬師堂は既に真っ赤な炎に包まれていました。
二人は炎をものともせず、お堂の中に祀られていた薬師様を抱きかかえ、すかさず渓流に身を浸し、火を消しました。
火が消え二人とも「ほっ」として薬師様を見てみると、全身が黒く焼けて顔の模様もわからないほどになっていました。そのときの焼け傷が今でも残り、地元では高尾の焼薬師様と呼ばれているそうです。
その後数回若杉山に大火事が起こり、谷間の家がほとんど焼けてしまった時でも、治右衛門と孫市の家は運良く焼けずに残ったそうです。
「これはお薬師様がお助けになったに違いない」と思い、より一層信心し、この薬師様のお守りに励んだといわれています。

『篠栗町誌(民俗編)』より


このページに関するお問い合わせ

篠栗町歴史民俗資料室
〒811-2405 福岡県糟屋郡篠栗町大字篠栗4754番地
電話:092-947-1790